アトピー性皮膚炎

 アトピーとは「奇妙な」といいギリシャ語が語源です。どうしてアトピー性皮膚炎「奇妙な皮膚炎」と名付けたかというとこの皮膚炎の原因がよくわからないというところからきているようです。
 アトピー性皮膚炎は痒みが強く、なかなか治らず慢性の経過を取る湿疹の一種です。
 赤ちゃんの頃は顔や頭皮を中心にジクジクした湿疹がみられ、耳が切れたりします。掻き傷が見られます。幼児から学童では湿疹が乾燥してザラザラしてきます。肘や膝の裏側に湿疹が出やすくなります
 アトピー性皮膚炎の子の皮膚は、これを保護する皮膚の油(皮脂)や角質層に問題があり、汚れやすく、ばい菌やウイルスに対して抵抗力が低下しているばかりかいろいろな刺激に過敏になっています。 
 原因についてはまだ一定の見解はありませんが、皮膚の異常に加え、食べ物やダニのアレルギーなどが関与していることもあります。消化管やカサカサした皮膚からいろいろなものが体の中に入りアレルギーを作り出してアトピー性皮膚炎を治りにくくしている可能性もあります。子どものアトピー性皮膚炎は成長とともに治まってきます。焦らずに、かゆくない程度の皮膚の状態を保ち、清潔な環境と栄養バランスがとれた食生活を続けることがアトピー克服の近道といえます。

アトピー性皮膚炎をうまくコントロールするための注意

1.スキンケア

痒みを押さえることが大切で、痒みを増す刺激、体温の上昇と乾燥を防ぐことが大切です。

アトピー性皮膚炎の子の皮膚特に汚れやすいので、毎日入浴し皮膚を清潔に保つようにいます。洗い方は健康な子どもより丁寧に、直接石鹸を手につけ十分泡立てて手で洗うようにします。特にガサガサしている所は細菌がつきやすいので十分に洗います。タオルにつけてこするのは刺激になるので避けて下さい。

 洗った後はあまり温もらないように。お風呂から出るときは、ぬるま湯(又は水)をかけ皮膚の温度を下げるようにします。体温が上がるとかゆみが増すからです。
 身体を乾かすときはタオルで擦らず、当てるようにして水分を取ります。擦るのは弱った皮膚を痛めかゆさを増します。入浴後すぐに寝かすと火照りのためかゆみが増し掻いたりします。必ず外用薬を塗りましょう。乾燥肌(カサカサした皮膚)は放置しないで保湿クリームを塗りいつもしっとりした状態を保つようにします。特に秋から冬にかけては保湿が大切です。
 直接肌に触る衣服は刺激の少ない木綿が適しています。衣服の洗濯はすすぎを十分に行うこと。新しい肌着は洗濯してから使用しましょう。

 爪は短くし、髪の毛は短く前髪は垂らさず、後ろ髪は首にあたらなうようにします。

2.環境調整

 ダニ、カビのアレルギーがアトピーに関係することがありますので住居環境の整備も大切です
 特に室内環境重点を置き、子どもがの1日中生活する場所ではダニ、家に塵を少なくするために毎日掃除する。家具類は最低必要なものとし、掃除がしやすいようにしましょうカビが生えないように風通しをよく日当たりの良い湿りの少ない部屋にいます。観葉植物はカビを増やすもととなりますので室内に置かないようにしましょう。
 子どもの部屋では刺激物であるたばこをすわない。窒素酸化物(石油、ガスの燃焼排気)やホルムアルデヒド(化粧合板)などによる汚染にも気をつけます。
 ほこりのつきやすいぬいぐるみや枕やじゅうたんは避ける。また猫、犬、小鳥などのペットはそれ自体アレルギーのもとになりますので部屋の中では飼わないことも大切です。

3.食事について

  1)除去食:食後間もなく現れるじんましん、腹痛などショックなどの食物アレルギーがはっきりしている場合は、患者自身の除去食は必要です。授乳中なら母親も除去食が必要となります。特に乳児期は可能な限り完全な除去食が必要です。
 しかし食後何時間も経ってから現れる痒みや赤みが多少ます程度の症状に対してはそれが食事が原因担っているかどうかを確認するのは非常に難しいものです。
 アトピー性皮膚炎だからといって調べもせずに除去食(卵や牛乳を子どもに与えない)をする人がいますが、これは間違いです。血液検査だけで原因が分かるという考え方も間違っています。
 最近厳格な除去制限食で成長障害や精神発達遅れを来したとされる報告が見られます。素人の食事療法は百害あって一利無しと言えます。本当に除去食が必要なのかどうかは専門医の正しい診断のもとで決められるべきです。
 除去食を行う必要のある状態とは、1)アトピー性皮膚炎が重症である。2)原因抗原がはっきりしている。(アレルギー検査、誘発・除去試験で確かめられている。)が目安になります。
 2)その他の食事:現在の食生活でみられる植物油(リノール酸)、食肉(アラキドン酸)の取りすぎは、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患の増加の原因の一つと考えられています。従って植物油を減らし、魚類を増やしてバランスを取ることが必要です。天ぷら、フライ、ハンバーグなどの油ものを減らし、サバ、イワシ、アジなど魚類の脂肪(エイコサペンタエン酸)を増やし、和食に近いバランスの献立良いとされています。

4.薬物療法

1.抗アレルギー剤:アレルギーを抑える抗アレルギ−内服薬も数多く開発されていますので専門医の指導を受けて使用して下さい。アトピー性皮膚炎の痒みをコントロールするには抗ヒスタミン剤なども必要です。

2.ステロイド:アトピー性皮膚炎でかゆみを押さえ、皮膚の状態を落ち着かせるにはステロイド軟膏は必要になります。ステロイド軟膏は強さの程度で5段階に分かれます。副作用を生じないように使用するには症状にあわせて軟膏を変えていくことが必要です。子どもでは中等度以下のステロイドしか使いませんし、原則は短期間使用です。いつまでも同じ軟膏を使用していたり、副作用をおそれて勝手に止めてしまっては正しい使い方とはいえません。必ず定期的専門医を受診して正しい指導を受けて下さい。

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